二十数回も見合いして相手を決めかねている女のひとがいて、私は彼女に言った。「このひとに決めてしまったらどうですか」。相手は見合いが初めてという仕事一筋の技術者である。結婚して女のひとの機嫌をとるのがいやだという。彼に言った。「向こうでもそう思っているかもしれませんよ」。話はまとまって、一人でいるより二人がよいということになった。二人は一緒に初めてお茶を飲んだときに言い合ったという。「あまり気をつかいたくない」のだと。それから話は「お互いに迷惑をかけないようにしましょう」ということになり、もう十年経った。子どもも二人生まれ、彼は九州、彼女は関東の出身だが、教師をする彼女の多忙さを知って、彼は育児と家事をよく手伝ってくれるという、楽しみながら。二人とも自己に忠実。そして相手を尊敬しあっていることがよい。見合いのときの服装の趣味が悪かったからと断ろうとした男のひとに言った。そのようなことでは話は壊したくない。幸いにそれが結ばれたあとで、あなたにはこれが似合う、私にはこれが似合うということを二人で教えあっていけばいいのだから、見合いのときに完全な相手を求めなくていいのではないか、と。浩宮様ではないが、価値観が同じひとなら、それが話していてわかったら、結婚してもいいのではないか。二人は結婚し、彼女は趣味がよくなった。彼女には彼の忠告を受けいれる素直さがあったというような風でありたい。
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