南向き住戸にこだわらず、風通しのよい北向き住戸も計画する一方で、プライバシーについては全住戸きちんと確保する。この考え方は、実は販売価格が一億円を超える億ションの計画では珍しいものではない。たとえば、ここ一、二年の億ションブームの火付け役である三菱地所のマンションを見ると、同じ「パークハウス」というブランド名でも、一般ファミリー向けと億ションとでは、不動産会社としての考え方が対照的だ。ファミリー向けの「パークハウス」では、南向き住戸の最大限確保を優先したための箱の配置の物件をけっこう見かける。それに対して、億ションの「パークハウス」たとえば「パークハウス神宮前」(設計:三菱地所、施工:ハザマ)や「パークハウス高輪」(設計:同、施工:東急建設)、さらに「パークハウス芝白金台」(設計:同、施工:前田建設工業・増岡組)では、北向き住戸をつくりつつ全住戸のプライバシーをしっかりと確保している。東急不動産の高級ブランドである『プレステージ』の中でも、億ションと呼べる物件になると、やはり南向きよりもプライバシー確保のほうが重要という姿勢が図面から読み取れる。平成九年販売の億ション「プレステージ代々木公園」(設計:アーキテクツーアンドーアソシエイツ、施工:三井建設)などは、そのわかりやすい例だ。東急不動産の考えも、億ションでは南向きよりもプライバシー確保を優先すべき、ということなのだろう。菱進不動産についても同じことがいえる。同社の億ション「ガーデンハイツ代官山」(設計:アオヤマプランニング、施工:竹中工務店)では、販売総戸数三〇戸中八戸が北向きと、やはりかなりの割合を占めている。